マグネットポンプはなぜ漏れないの?
渦巻きポンプについて


マグネットポンプは漏れないポンプです。ポンプは水などの液体を低い所から高い所に運んだり、遠くに運んだりする機械ですが、ここでは渦巻き型の羽根車を使ったポンプを例にとって説明しましょう。
図1は渦巻き型の羽根車(インペラー)です。図2はその羽根車に軸(シャフト)をつけて回しているところに、上から水を注いでやると、羽根車は水を振り回して遠くに飛ばすさまを表しています。図2は何かに似ていませんか。雨の日に傘を回すと雨水は遠心力で飛んでいきます。
そうです。この羽根車は傘を回すのと同じ遠心力の原理で水を飛ばしているのです。羽根車の中には傘の骨の代わりに渦巻き型の羽根が入っています。 そして渦巻き型の羽根を使って水を運ぶポンプを渦巻きポンプと呼びます。


図2では羽根車は水を周りに撒き散らすだけです。しかしポンプは水を撒き散らすのではなくパイプやホースなどの決まった通路につないで水を動かしてやらなければなりません。図3のように通路につながる入口と出口のついた容器に羽根車を入れてみるとどうでしょうか。
この容器をケーシングと言います。ケーシングは入口と出口以外から水の漏れない密閉容器になっています。これで水の通る通路の完成です。 でも図3をよく見て下さい。ケーシングの中の羽根車をどうして回すのでしょうか。 羽根車は回してやらなければ水を動かすことはできません。そこでケーシングに穴を開けてそこに電動モーターの軸を通して羽根車に付けることを考えたのが図4です。 これなら電動モーターを電気で回してやると羽根車が回りますね。
これでポンプは水を送れるようになりました。これで渦巻きポンプの形ができました。
マグネットポンプはなぜ漏れない?


ではポンプを動かしましょう。あっ、軸を通したケーシングの穴からすごく水が漏れています。
(図5) どうしたらよいのでしょうか?ケーシングの穴と軸のすきまに水漏れを止めるつめものをいれてみましょう。それが図6です。軸シールというのがつめものです。これで水漏れが止まりました。
でも待ってください。しばらくするとまた水がしみでてきました。これは回っている軸と動かないつめものがこすれあって、つめものが擦り減って狭いすきまができたからなのです。ケーシングの穴と軸のすきまの水漏れを無くすためにいろいろな種類の擦り減りにくい軸シールが考えられてきました。でも半永久的に水漏れを止める軸シールはできませんでした。軸シールを持つポンプでは水漏れしてきたらいったんポンプを止めて新しい軸シールに取り替えてからまた動かすという面倒なことをしています。

そこで図7のマグネットポンプの登場です。
マグネットは磁石のことですが、みなさんは磁石どうしは引っ張り合うのを知っていますね。マグネットポンプは密閉容器のケーシングの内側を少し大きくして羽根車付きの軸に磁石をつけたものを組み込んだものです。そしてケーシングの外側に電動モ-ターで回せるようにした磁石を取り付けます。
こうしておくと密閉容器に穴を開けずに羽根車を回せるのです。
電動モーターで外側の磁石を回してやると、磁石と磁石は引っ張り合いますから内側の磁石も同じように回ります。内側の磁石が回るとそれにくっついている軸や羽根車も回って水を送れるようになるわけです。このようにしてマグネットポンプは密閉容器に穴を開けずに羽根車をまわすことができるので漏れることが無いのです。図5のような軸シールもいりませんし、考える必要もないのです。